四日目 世界遺産の街へ(新都ヴァレッタ・後編)
>>The Armoury and Grand Master's Palace
一息ついて向かったのが、大聖堂の先にある「騎士団長の館」(Grand Master's Palace)。ここはマルタ島が騎士団に統治されて以来、グランドマスター(騎士団長)が政治の指揮を執った、いわばマルタの首相官邸みたいな施設であり、数々の重要な対談や会議も、ここで行われてきた。
もともとマルタの騎士団は、聖ヨハネ騎士団としてエルサレムの修道会から興ったもので、それがオスマントルコの勢力から逃れて地中海を渡り、シチリア王から鷹一匹を代償に、マルタ島を与えられたという(ずいぶん省略しているが)歴史がある。
きっと国民にとっては、外部から軍隊を引き入れたみたいなものだったのだろう。現在の首都「ヴァレッタ」も、初代団長「ジャン・ド・ヴァレット」にちなんで名がつけられたという。
騎士団長の館は、そんな歴史がぎっしり詰まった展示施設。入場料は10ユーロと若干お高いが、邸宅と武器庫(こっちがすごい)共通のチケットなので、たっぷり見学できて充実感がある。特に、私は何を隠そう武器マニアで、ずらりと並んだ古武器や防具にゾクゾクしながら、エキサイティングなひと時を過ごした。
まあ、広い体育館みたいな部屋に、あるわあるわ。甲冑から大砲からサーベルから、ありとあらゆる武器が、素晴らしい保存状態で並んでいること!
馬の兜や具足ならぬ鉄ブーツなどという、レア防具もあったりして、好きな人にはたまらない世界。また、手を伸ばせば触れる所に、囲いなしで大砲が置いてある。その数、優に20門は超えていたはず。さらには、鎖帷子のようなアンダーシャツもあり、考えることは世界共通かと納得。
しかし何より驚いたのは、その手入れの良さ。サーベルやフルーレは、刃が立ったままピカピカに研いであり、今すぐにでも戦闘体勢に入れるコンディション。ステンレスがない時代の鉄武器が、ここまで保存されているのを見ると、ヨーロッパの湿度の低さや、石造建築の恒温性を改めて羨ましく思ってしまう。
>>Upper Barracca Gardens
騎士団長の館を出てリパブリック通りを引き返し、いよいよ午後のメインである旧都イムディーナへ。その前に、バス乗り場へのルートをちょっと回り道して、「Upper Barracca Gardens(アッパーバラッカガーデン)」へ立ち寄り。
ここは、バス乗り場の南東にある公園で、ヴァレッタで最高と言われる海の眺めが楽しめる。地元では夜のデートコースとしてもおなじみなんだとか。
途中で念願のジェラートを買って歩きながら公園内へ。今日は日差しも強いし、冷たいものが美味しい。
とは言え、着ているものは長袖。こっちの気候はうっかりすると、風と日照の具合で真夏でも震えるほど。ヨーロッパ人を真似してキャミ一枚で出歩くと、うっかり風邪をひいてしまう事もあるので上着は必携。
写真上の馬車が並ぶ入り口を抜け、公園の中へ入るとまずは植え込みの遊歩道があり、次に少し広々とした広場に出る。やがてアーチ型の柱廊が見えて来たら、その先には海が広がる。ヴァレッタの対岸、今朝船で渡ってきたスリーマや、はるか向こうにセント・ジュリアンも。まさに絶景とはこのこと。
その現地の空気を楽しんでいただきたく、パノラマの動画をアップ。手回しのオルゴールから流れてくる、いかにもヨーロッパ的な音楽も、旅の風情として感じていただければ幸いだ。
>>Mdina-1
さて、いよいよマルタバスに乗って、旧都「Mdina(イムディーナ)」へ。朝、見かけた黄色いマルタバスが、ヴァレッタ遷都以前、この国の都であったイムディーナへ向かう唯一の公共交通機関だ。
ちなみにマルタバスは、なんとトトロに出てきた猫バスのモデル。今回の旅では初トライなので、やや緊張して乗り込んだが、じーちゃんやおばちゃんが助けてくれて、バス停の看板さえないのに、難なく目的地に到着。(ただし手前に「ようこそイムディーナへ」の英語サインボードあり)
さて、この旧都も新都ヴァレッタと同じく、外敵の襲来に備えて城塞都市であることは言わずもがな。降りてガイドブックを頼りに、この橋を渡って城壁内に入ろうとしたそのとき、今回の旅でいちばんの椿事が起こった。
そう、なーんとナンパされたのである。この私がだ(笑)
さて、いよいよマルタバスに乗って、旧都「Mdina(イムディーナ)」へ。朝、見かけた黄色いマルタバスが、ヴァレッタ遷都以前、この国の都であったイムディーナへ向かう唯一の公共交通機関だ。
ちなみにマルタバスは、なんとトトロに出てきた猫バスのモデル。今回の旅では初トライなので、やや緊張して乗り込んだが、じーちゃんやおばちゃんが助けてくれて、バス停の看板さえないのに、難なく目的地に到着。(ただし手前に「ようこそイムディーナへ」の英語サインボードあり)
さて、この旧都も新都ヴァレッタと同じく、外敵の襲来に備えて城塞都市であることは言わずもがな。降りてガイドブックを頼りに、この橋を渡って城壁内に入ろうとしたそのとき、今回の旅でいちばんの椿事が起こった。
そう、なーんとナンパされたのである。この私がだ(笑)
「こんにちは。ジョセフといいます。地元の人間なのですが、よかったら観光案内させてください」
「ガイド料金はお支払いできませんよ」
「とんでもない、私がお供させていただきたいだけです」
帽子を取ってお話する英国式のマナーから、おそらく客引きや悪質なナンパではなさそうだと判断したので、理由を聞いてみると、やはり仕事を引退して暇なので自主的にボランティアをしているらしい。リタイアが早いヨーロッパでは、こういう人生を持て余している方々は多いのだろう。
ただし「若い女性だけ。私もそこまで親切じゃない」なのだそうだ。日本で言えば、私など若くはないのだが、こっちではお嬢さんで通用するらしい。それに気をよくしてガイドをお願いしたのだが、これが脱線の元だった…
なにしろジョセフ氏、「自分が説明するからガイドブックをしまえ」、と日本語の解説を読ませてくれないし、決めていたルートも「そこは見ても面白くないよ」と、マルタ人から見たおすすめコースを強引にすすめていく。よって、初めてイムディーナを訪れた外国人には、いささか調子の狂う観光になってしまった。
しかし最後に「じゃあ、ここへどうぞ」と連れてこられたのが、「カフェ・フォンタネッラ」。ここはもともと来ようと思っていたので、好都合だった。ただ、その前にゲートの近くにある「リストランテ・イムディーナ」でランチを取る予定だったので、スケジュールは大狂い。この時、時刻はすでに2時。おなかペコペコのまま、お茶に突撃する羽目に。
「カフェ・フォンタネッラ」はマルタの数少ないガイドブックにも登場する、観光地の人気店。城砦の中の高台から景色を眺めつつ、お茶が飲めるという趣向だ。石造りの入り口から入ると一階席もあるが、左手の階段から上がった二階席が眺めがいい。
←これが、その「マルティーズ(マルタ風)コーヒー」。「アニセット(アニス酒)は大丈夫?」と聞かれただけあって、けっこうアルコールが効いている。コーヒーというよりはカクテルの一種だと思ったほうがいい。見た目を裏切る暖かいコーヒー+大量の生クリーム。味ははっきり言って「まずい!」の一言だが(笑)観光の記念に試してみるのも一興だろう。
カフェでは、ジョセフさんから色々と楽しい話が聞けた。マルタの産業のことや歴史のこと。彼は現役の頃は政府の機関に勤めていたそうで、EU加盟とは言っても、イギリスの属国に近いマルタの発展の遅さに「うんざりするよ」と苦笑いしていた。
観光客から見ると、その素朴さがマルタの魅力なのだが、住んでる人には不便も多いのだろう。お気楽に観光に来ているだけでは感じられない、居住者の意見を聞けただけでも、ジョセフさんと話ができて良かった。最後までジェントルマンのジョセフさんに、ありがたくご馳走になり、この後はさっき行きそこなった聖堂や街のあちこちを探検に。
>>Mdina-2
さて、いよいよ本番。まずは聖堂から。
ジョセフさんが言うように、ヴァレッタの大聖堂と比べれば、本当にささやかな施設だとは思うけれど、それでもヴァレッタに遷都されるまでは、かつての都の象徴であった教会なわけで、やはりここは見ておくべき。
ジョセフさんが言うように、ヴァレッタの大聖堂と比べれば、本当にささやかな施設だとは思うけれど、それでもヴァレッタに遷都されるまでは、かつての都の象徴であった教会なわけで、やはりここは見ておくべき。
教会の入場チケットはとなりの博物館の受付で購入。二館の共通券となっている。まずは、聖堂の内部へ。
面積は、ヴァレッタ大聖堂の半分もないだろう。しかし、それでも中世の教会らしく、精一杯の思いで職人たちが捧げたアートが設えられている。床のタイルの下が墓所になっているのも、同じく。
この日は地元の方々が正装して集まっていた。何か儀式が行われているようで、あまり邪魔になってもいけないので、一回りしたら博物館のほうへ向かうことにした。
ガラス張りのエントランスが素敵な博物館は、とても静かでモダンなムード。ここは主に旧都時代の王家や貴族の家財、装飾品が展示してあるらしい。特に銀製品の種類が豊富で、高さ1mはあろうかという銀の大きな杯であったり、銀メッキの彫刻であったり、非常に華やかだ。
中でも興味をそそられたのが、銀食器のコレクション。ヨーロッパでは、銀器や陶器は代々、先祖から譲り受けたものを磨いて使う土地柄だけに、古いものがきれいな状態で残っている。
新品を買うと、カトラリーだけで数十万円もザラな装飾銀器だが、ドイツの友人いわく「蚤の市に行くと、欠品のあるセットなら、5万円くらいよ」とのこと。 機会があれば、そういう骨董を探して歩くのも、ヨーロッパらしい楽しみ方だろう。
最後は、路地を探検し、ガラスや小物をしばし物色。このイムディーナは数十人しか人口がなく、それも元貴族や特権階級に限られているため、猥雑な人通りがなく「静寂の街」と言われている(ただし観光スポットには人が多い)
写真は、一歩裏通りに入った路地の風景。ふとデジャヴを感じてしまうのは、きっと私だけではないはずだ。
>>Dinner at Mint
そうこうしているうち、時間はもう4時。すっかりランチを食べ損なってしまったが、イムディーナでディナータイムまで待つのもどうかと思い、スリーマへ帰ることにした。
マルタバスでヴァレッタまで戻り、ふたたび船に乗ってスリーマ港へ。土産物屋で小物入れやリキュールを買っていると、もう6時前になったので、ホテルに戻ってシャワーを浴び、着替えて外に出たらディナーの時間。
マルタバスでヴァレッタまで戻り、ふたたび船に乗ってスリーマ港へ。土産物屋で小物入れやリキュールを買っていると、もう6時前になったので、ホテルに戻ってシャワーを浴び、着替えて外に出たらディナーの時間。
場所は海岸沿いをセント・ジュリアンの方へ向かって、道が4つに分かれるポイントの左手。オープンカフェみたいなテラスがあり、その奥の店舗にガラスのショーケース。中にはボリュームたっぷりの惣菜やパイ、デザートが並んでいる。いやはや、その大きさときたら!
このラザニアのサイズを見て欲しい。優に豆腐2丁分はあるに違いない。ケースから出したのを、わざわざマイクロウェーブとオーブンで焼きなおしてくれる丁寧な仕事だが、軽く二人前。そしてどっさりサラダがついてくる(ポテトでなくて良かった)
結局、食べられたのは半分強とサラダのみ。本当は名物のチョコレートブラウニーを食べたかったけれど、とても無理。ちなみに、お味は悪くなかった。日本人には少し薄味かもしれないが、ハーブが効いた上品なラグーで、焼き加減もナイス。数人で行く方々には、おすすめできる店だと思う。
この後はホテルの地下にあるジャグジーに入って、明日の出発の準備。あっという間のマルタ滞在だった。明日の午前中はスーパーに行ってお土産を探さないと…。
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