二日目 漁村でシーフードランチ

>>Aimed at the southeast

 タルシーンで予想外の時間をくった上に、1時間1本のバスを待ったものだから、もはや時刻は1時前。当初の予定ではもう次の予定地、Marsaxlokk(マルサシュロック)でランチのはずだから、当然お腹もすいてくる。
 でも、ちょっと我慢。マルサシュロックはマルタで一番大きな港町。しかも漁師風のシーフード料理を出す店が何軒もあると聞けば、途中で挫折するわけにはいかない。
 タルシーンからマルサシュロックまでは、途中に観光名所のスリーシティーズがあるのだけれど、今回は車窓からの風景と音声ガイドで楽しむことにして、約30分ほどのバスドライブ。

  右上は、途中で通過(ご親切に写真休憩あり)した、スリーシティーズの名所、Vittoriosa(ヴィットリオーサ)にあるFort St. Angelo
(聖アンジェロ砦)。海上の敵から国を守るため、目や耳のレリーフが施され、一種独特なムード。

 左下はバスの運転手さん。基本、ドア開けっぱなしで運転するらしい、この国は(驚)。「バスのドアを閉める理由を教えてくれ」ということらしいけど、「だったらなぜドアがついているのか」から説明しないといけないので、非常に骨が折れそうだ。
 そしてサボテン。国中(島中)至る所に自生しているマルタサボテン。うちわサボテンの一種だろうか。黄色い可憐な花の後に、赤~紫の実をガンガンつけ(本当にびっしりつく)、それが市場ではフルーツとして出回っている。また、加工してマルタ名物の「バイトラ」というリキュールにもなる。この「バイトラ」は世界でもマルタだけにしかない、非常に変り種の酒である。


>>Marsaxlokk
 そうこうしているうち、ようやくマルサシュロックへ。マルタ随一の港と聞いていたけれど、意外と小さい。何しろ大型漁船がないのだ。あるのは、ルツと呼ばれる4~5人乗ったら満員になりそうな小さなボートのみ。
 聞けば、マルタの漁師はこの小さな船で波の荒い地中海へ出るそうで、そういう意味では日本の近海漁師と相通ずるものがあるのかもしれない。
 
 ちなみにルツの写真が左。独特のブルー&イエローの伝統色で彩られ、帆先に目が描かれているのが特徴。航海の標になるようにとの願いからだそうだ。

 さて、いよいよレストランへ。何軒かお目当てがあったのだけど、その中で一軒だけ営業していたのが「IR RIZZU(イル・リッツ)」。旅のブログなどでも紹介されていたので、悪くはないだろうと入ってみた。

>>IR RIZZU
 店内はけっこう広い。右手にカウンター。奥に調理場。店のオーナーらしいメリヤスの下着に長靴のオッチャンがホールをウロついているのがいただけないが、取りあえず一人客を告げて席を作ってもらい、昨日から飲みたくて飲めなかったマルタの地ビール「CISK(チスク)」をオーダー。
 右の写真、私の巨大な手(広げたら20cm)でも、外周が半分しかつかめないほど大きなグラス。小びん一本は入っているだろうそのビッググラスを持ち上げ、お初のマルタビアを。

 お味はバドワイザーみたいなライト系。暑い日の遅めのランチにはぴったりの軽さなのだが、付き出しとして出された皿の分量にびっくり。

マルタ風ブルスケッタというか、パンに野菜マリネのせ+巨大白いんげん+マルタ名物ビッギーラ(豆のペースト)が山盛りでやってきた!そしてカゴ一杯のマルタパン。

 普段の私の食欲を知る人が見れば「一食分」と思うほど、勢いの良い盛りだ。たった一杯ビールを頼んだだけなのに。しかし、すでに前菜とメインを頼んでいたので、これは用心して手をつけず放置。その判断が後で私の身を救うことになる。

 さて、いよいよ料理の登場。笑ってちょうだい、この大きさ(笑)前菜でこれだもの。料理名は「たこのソテー」。しかし日本のたことは大きさが違う。添え物のサラダのトマト、日本の一般的なトマトの大きさで、決してプチではない。また、右側はスダチではなくレモンである。
 足の直径から、その原型がどれほどの大きさのたこか、想像しながらフォークをぶすり。うん、やわらかい。お味は、ちょっと濃い目だけど、想像通り。オリーブオイルとにんにく、オレガノと白ワインで調理した、シーフード独特のうまみとコク。
 ただし、日本のイタリアンレストランと比べると、いかにも風味が野暮ったい。ここらは、港町の漁師料理ならではのご愛嬌だ。

 ここで、CISKをおかわり。おー、今度は瓶で来た。アバウトな店だ(笑)そして、ほぼこの時点でお腹一杯になっているところで、メイン「シーフードリゾット」登場。
 右の写真、ムール貝の大きさで判断して欲しい。ざっと日本のリゾットの三人前。メインコース(主菜の一人前)ではなく、スターター(前菜)サイズで頼んだのに。絶対コレ注文間違ってる!(あとで確認したら、やっぱりメインコースになっていた;)
 
 しかし、注文した以上は食べねばなるまい。おもむろにスプーンを持ち、山を切り崩すように、せっせと食べるが…一向に減らない。
 ちなみに味は「悪くない」といった程度。薄味のトマトソースであっさり仕上がってはいるが、いかんせん米が柔らかすぎるのだ。いくら日本人が米を炊く民族であっても、リゾットがアルデンテでないのはいただけない。フニャッとした米の食感も手伝って、やはり大部分を残してしまった。
 ただし、マルタでは「Doggie Bagちょうだい」が通用するので、明日か明後日の非常食用に持って帰ることにした。2食くらいはいけそうだ。

>>Explore the Harbor
 食後は港の近辺を散策。しかし目抜き通りといっても店はポツンとしかないし、2時間ほどシエスタの習慣があるため、昼時はクローズしてしまう。
 写真左は、港の船着場に出る屋台のマーケットだが、これも昼過ぎには店じまい。日本のクレイジーな働きぶりを見たら、きっとマルタ商人は卒倒してしまうに違いない。
 そうしているうちにバスの時間が近づいてきた。スリーマやヴァレッタとはまた趣がちがう、マルタの田舎を目に焼きつけ、最後に港の突堤の方へ行ってみた。とにかく水がきれいなので、近くで見てみたくて。
 それが右の写真。港なのに、この透明度。浅く見えているけれど、実際はそこそこ深さがある。魚の種類は何だろう。これだけいっぱいいるということは、きっと海の栄養が豊富なのだろう。

 最後は、バス停近くのゴミ箱に張られた不可思議な宣伝文?だれかこの意味がわかる方、ぜひぜひご一報ください(笑) 








二日目 観光バス・午前の部



>>Breakfast in cafeteria

 旅先だろうがお構いなしで働く私の体内時計。マルタでもきっちり5時半に目が覚めた。(実際はサマータイムで1時間早いのだけど)今日は予約しておいた島内(イコール国内)周遊バスに乗って、この旅のメインテーマである遺跡群を訪れる予定。その前に、まずはスタミナ補給を。

 一階のカフェテリアで、朝食。ルームキーが通行手形がわりだ。メニューは何の変哲もないイギリス式で、卵料理にハムやチーズ、そして焼きトマトにビーンズ。正直あんまり美味しくないが、自家製のヨーグルトは格別だった。濃厚でクリームチーズを溶かしたようなコクがあり、甘味を加えなくても充分いける。

 あと、離島のゴゾ名産のはちみつ。メイプルシロップのような香ばしさがあり、アルコールのないラム酒を思わせるVery Goodなお味。これはハマってお土産にどっさり買い込んだ。写真の丸い容器、蜂の巣マークが特に美味しい。

>>Hop on hop off tour

 腹ごしらえが済んだら、いよいよ出発。昨日、フロントでブッキングしておいた「Malta Sight seeing」というダブルデッカーのバス。これはヨーロッパ各地で走っている観光バスの一種で、それぞれ名所を巡るルートの中から、好きなものを選んでチケット(15ユーロ)を買えば、どのストップでも終日乗り降り自由というもの。さらに、車内に各国語(なんと日本語も)のイヤフォンガイドがあるため、車窓からの景色を見ながら観光も楽しめる。
公式サイト「Malta Sight seeing」

 そんなわけで、近所の集合場所「プレルナホテル」で8時40分ピックアップを待ったわけだが、これが待てど暮らせど来ない(苦笑)外国のサービスは日本ほどきちんとしていないので、30分待ってホテルに戻り事情を説明したが「何ででしょうかね~」と、要領を得ない。仕方がないので、通りを走っていた同じマークのバスに突撃。「待ってるけど、来ないの。どうにかして」と、やや強硬な態度で迫ってみたところ、港の発着所まで送ってくれた。海外では図々しい方が勝ちだ。結局、ピックアップ場所がプレルナの入り口ではなく、道を渡った向こう側にあったからなのだが、ホテルのフロントは信用できないと学習。それ以後はすべて自分で直接コンタクトをした。


 港からようやく本来のルートに乗り換えて、いざ出発。日本語ガイドを取りあえず使ってみたけど、アルバイトのお姉ちゃんが「それでぇ~」みたいな口調で解説していて気持ち悪い。きっと留学生を使ったんだな。マルタは治安がいいので、日本から語学留学に来る学生が多いらしい。でも、マルタ英語は訛りがきついし、将来的にビジネス活用するならイギリスやアメリカで英語圏の文化ともども学んだ方が、よほど有利ではないだろうか。

 そんな事を考えているうち、バスはスリーマ港からマヌエル島を通過。ここはスリーマとヴァレッタの間にある湾に浮かぶ島で、陸とは橋で繋がっている。公園がある程度で特にティピカルな建造物などはない。バスも解説だけで通過し、首都ヴァレッタ界隈へ入る。

 ヴァレッタへ入ると、途端に町の様子が一変する。さすが、街がまるごと世界遺産に登録されるほどの、独特の建築様式に圧倒されるが、宿泊先からここまでは目と鼻の距離。後日じっくり観光することにして、今日は車窓から景観を楽しみつつ、その先にある「Tarxien」(タルシーン)という遺跡を見学しに行くことにした。


>>The Tarxien temples

 「タルシーン」とは何ぞや、という説明の前に、マルタが遺跡の島であるということを理解してもらう必要がある。ただし、歴史や考古学に興味のない人には退屈この上なしの解説となるため、以下の着色部分を飛ばして読まれることをおすすめしておく。

■ マルタの遺跡について

 地中海の小国であるマルタには、世界の考古学者と冒険者を魅惑する古代の遺跡が、ここぞとばかりにひしめいている。土地柄、文明や宗教がクロスする地点でもあることから、なんとアトランティス説も浮上するほど。その貴重な遺跡群がマルタでは、野ざらし同然で保存され、環境客が間近で拝めるのだから、遺跡好きにはたまらない場所だ。

■古い!そしてすごい!

 マルタの遺跡群が構築されたのは、今から約5,500年前の紀元前3,500年前頃。その頃、ヨーロッパには文明もなく、メソポタミア文明もエジプト文明もまだ起こったばかりの「世界のはじまり」において、なんとマルタではすでに大規模な石造建築が始まっていた。

 その特徴は「巨石」が用いられている事であり、中にはトンに及ぶ重さの石も発掘されており、これを総じてマルタ島の巨石文明と呼ぶ。ただし、文字の発達していなかった時代だけに、建築目的や方法はわかっていない。ただし、多くの偶像が見つかっていることや、建物の構造などから、それらは神殿として使用されたというのが、有力説だ。

 ちなみに、それから数百年を経てイギリスのストーンヘンジ、アイルランドのニューグレンジやフランスのブルターニュ地方のストーンサークル群が作られているが、関連性はまだ研究の途上である。

■観光可能な遺跡群

ハジャーイム・イムナイドラ・ミスア貯水タンク・タルシーン・ハイポジウム・聖パウロのカタコンベ・ジュガンティーヤ・タハージュラ・スコルバ・カートラッツ

 今回はこのうち、タルシーンとジュガンティーヤを見学した。本当はもっと回りたかったが、あれこれとハプニングが起こり、残念ながら次回に持ち越すことに。


 右がタルシーンの入り口。バスのストップでは「タルシーン&ハイポジウム」と、2箇所合体しているが、これはもうひとつ至近距離に「ハイポジウム」という地下遺跡があり、そこに行く人も同時に降りるからだ。
 しかし「ハイポジウム」は、状態保存のため徹底的な管理がされており、見学できる人数に制限がある。特にハイシーズンは予約が殺到するため、私も2週間前にネット予約を試みたが、すでにフルブックだった。マルタで最も神秘的な遺跡と言われているだけに、残念。今度は予定が決まり次第予約を入れることにしよう。


 さて、この「タルシーン&ハイポジウム」に限って、バスを降りてからの注意点をひとつ。とにかく道がわかりにくい、というより完全に住宅街の中にあるので、それらしい目印がないのだ。さらに悪いことに私の場合、イタリア人の女の子につかまってしまい、みんなと同じ方角に進もうとしたところを「あなたタルシーンに行くんでしょ!こっちよ、私さっきバスの中から看板を見たの」と、来た道を引き返して遠回りに付き合わされてしまった。たぶん、みんなと一緒に行ったら近かったと思うんだけれど…。看板を見つけて得意気になっている彼女を振り切るのは忍びなかったので、20分ほど一緒に歩いてあげた。


 そしてようやく到着したのが上の建物で、入り口に小さい机がひとつ、それが入場券売り場と売店のレジを兼ねる。6ユーロ払って中に入ると、そこは広場に石の衝立が立っているような光景で「ああ、ガイドブックで見たタルシーンだ」と思いつつも、「そう言われなければ、廃墟みたいな…」という感じ。
 しかし、これはまぎれもなく有史以前の人々の築いた建造物であり、当時の人々も(これほど劣化していなかっただろうが)同じ場所で同じ風景を見ていたのかと思うと、熱くなってくる。
 左の写真は、地面に掘られた穴の跡。地面に限らず、タルシーンにはこのような穴が壁などにも作られており、独特の様相を呈している。大きさは私の足がぴったり入ってしまう程度。

 そして、ここで見逃してはならないのが、豊かな女性の下半身の像。風化したのか、破壊されたのか、ぱっつり下半身しか残存していないのが、また何ともミステリアス。テレビ番組でマルタの遺跡が取り上げられるときには、必ずと言っていいほど、この「ファットレディ」の石像が紹介される。
 なんだか、自分の足腰を見ているような、すごい安定感があるけれど(笑)この時代の女性というのは、太っている方が美しいと考えられたそうで、現代でも社会の景気が良い、または安定しているときはふくよかな女性がもてはやされ、そうでない時にはスキニーな女性がもてはやされると、何かの本で読んだことがある。だとすると、この時代は生活が安定していたのか。それとも原始的に母体としての女性を崇拝したのか。言語が残っていないので、想像を膨らませるしかない。

 しかし言語に変わるものとして、タルシーンには様々なものが残されている。ひとつは、彫刻として施された模様。これらは雲であるとか草であるとか、考古学者によって解明が進んでいるそうで、動物の絵の彫られた壁も随所に見られる。下図は牛が描かれた壁。


 祈祷や儀式に使ったのだろうか、鉢や水がめも残っている。有史前のものがこんなにハッキリした形で残っているなんて、まさに奇跡。




←そして、そんな貴重な遺跡に触るバカタレ。絶対今夜ヘンな夢みるぞ(良い子は真似しちゃいけません)

 まだまだ写真はあるけれど、遺跡マニアはここまで。今日は暑かったので、ちょっと木陰で一休み。マルタ独自の国民的ドリンク「Kinnie(キニー)」で水分補給を。お味は、うーん「ほろ苦い柑橘系」。アニス系の飲み物がオッケーな人なら好きだろうけど、ファンタ系に慣れてる人には無理かも。

 そしてこの後、日本の恥をさらす大事件が…。なんと、来るときに延々と市街地をさまよって来たので、帰り道で迷子になってしまった(方向音痴)ひとり、降りたバス停の光景を思い出しつつ、炎天下をうろうろ…。
 しかし悪運強しとはまさに私のことで、目の前になんと警察署が!飛び込んで事情を説明したら、100キロ級のおまわりさん達がよってたかってバス亭を探してくれて、その中のいちばん怖そうなオッチャンが自分の車を出してくれることに。(公務でなく親切ということ?)

 結局、ほんの近くにバス停はあり、やはりみんなと同じ方向に歩いていけば良かったもよう。これから行く方は、この目印の教会を見失わないように。おわりさんも笑ってた「学生か?家族とはぐれたのか?」って。すいません、私たぶんその倍の年齢です(心の声)



一日目 SliemaからSt Juliansへ

>> Hotel Location

  お散歩レポの前に地理的なインフォメーションを少々。

 マルタでホテルの集中するエリアは、まず私が泊まってるスリーマ。ヴァレッタフェリーの上辺りに、小さくSliemaと表記されているのがわかるだろうか。ここはオフの人口2万人、オンの人口9万人という中級&大型ホテルの密集地帯で、比較的近年に発達した街なので歴史的建造物は少ない。ただし、どこへ行くにも便利なので、動く旅の人には非常におすすめだ。

 一方、北側のSt Julians(セントジュリアンズ)は、交通の便は少々悪いけれど、遊ぶには最高のロケーション。近隣にはヒルトンタワーやドラゴラーナはじめ高級リゾートホテルが並び、カジノやクラブ、高級レストランなどナイトライフが充実している。リゾートライフ満喫派には、最も適した場所だろう。

 南側の首都ヴァレッタは、全てのマルタバスの発着点であり、銀行やツーリストセンターなど、昼間の都市機能に関してはダントツ。しかし、ホテルは少なく夜は閑散として遊ぶ場所がない。とにかく交通の便を選ぶ、または世界遺産の街に泊まりたい、という向きでなければ少々不便かも。

 この他、新興リゾートとしてブギバや、マルタでは貴重な美しい砂浜を誇るゴールデンベイなど、旅のスタイルによって宿泊地のチョイスも変わるだろうが、なめちゃいかんのは「直線距離が短い」イコール「すぐ行ける」ではないことだ。マルタは交通の便が決して良くない。バスはいちいちヴァレッタに戻って乗り継ぎになるし、ダイヤなんて何さの世界なので、10分遅れただけで遅延と騒ぐ日本の交通網に慣れた人には、意識の入れ替えが必要になるだろう。

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>>Explore the boardwalk

 さて、行かない人には全く関係ない話が終わったところで、いよいよ散策開始。

 この日は土曜日で、本来なら閉まっている場所が多いのだが、逆に観光名所の聖エルモ砦は土日のみの開放。急げば間に合うと思っていたけど、飛行機の延着とお迎えのグダグダでタイムアウト。スリーマからセントジュリアンズの散策に切り替えた。

 右の写真は、ホテルからタワーロードの遊歩道に出たあたり。こういう街灯のついた道が、延々と海岸沿いに続いていて、観光客も地元の人(その多くが犬を連れている)も、のんびり外の空気を楽しんでいるのがマルタ流。

 日本と違うのは、柵の高さがどうとか、こんな突堤どうとか、国に安全性をゆだねるのではなく、快適が一番で後は自己責任。遊泳禁止区域なんてのもないし、変な看板や注意書きもないので、とても景観が素敵。

 時間は午後5時半すぎ。マルタではこの時期、サマータイムなので、実際は4時半くらいかな?まだまだ明るいけど、この日は乾季には珍しく午前中に雨が降った(雨女の実力発揮)せいか、少し薄曇りで寒いっ!夏なのに、半袖では我慢できないほど寒かった。なのに、半裸で歩いているアングロサクソン…人種が違うってこの事か。

 さて、肝心の海というと、ご覧の通り岩の海岸。日本での地中海のイメージというと、紺碧の空に白い雲、マリンブルーの海にヨットが浮かぶ…とかいう、優雅なイメージでしょ。実際はとんでもねぇ(笑)けっこう荒々しい海だわ、サブちゃんの歌が似合いそうな!特にこの日は風が強くて、波もどっぱんどっぱん、叩きつけて怖かった。






 しかし、せっかく来たんだし、近くで見ようと思い、階段を見つけて海岸に降りてみた。

 まあ、見てちょうだい、岩よ、岩(笑)建物に使われているライムストーンと、質は多少違うとのことだけれど、やはり石灰岩が基本の島。波風に侵食されて、ボコボコ状態。
  それでも、ここでみんな泳いだり甲羅干ししたり、カフェを満喫したり。そして、ちゃんと一定の間隔でゴミ箱(しかも分別できるハイパーなもの)が設置され、大切な海を守るための意識が高いことが伺える。


>>Today's dinner
 海岸とは反対側、街の方を向いた感じが左の写真。何気ない街の風景だけど、見事にライムストーンで構成されているので、 まるで映画のセットのよう。車と標識がなかったら、中世が舞台の映画に使えるんじゃないかと思ったら…やはりマルタは映画のロケ地としても有名で、ブラッド・ピット主演の「トロイ」はじめ、「グラディエーター」など数々の作品の舞台になっているそうだ。(http://www.mtajapan.com/movie.htm

 延々とセントジュリアンズまで歩くと、30分くらいして右手が湾になり、海際にエミレーツの赤い看板が並ぶカフェが見える。その辺りがセントジュリアンズの入り口で、もうしばらくすると、観光客に名高い「ラ・ドルチェヴィータ」や「ペピーノ」など、スノッブなレストランが見えてくる。

 しかしそういう店はカップル向きなので、来た道を戻り、「Tripadvisor」で好評の「The kitchen」に行く事にした。場所はタワーロード沿い。ガイドブックでおなじみの「タ・コリーナ」から数軒セントジュリアンズ側の一階にある。

 店の前には「○○受賞」のサインボードが、さりげなく出ている。きっと味には自信があるのだろう。今日は長旅+機内食でウンザリしていたので、美味しいものが食べたい。時間もまだ早いし、エイッとお一人様で飛び込み、首尾よくドア近く、海が見える席に陣取った。

  メニューは、イタリアンが基本でフレンチをプラス。ちょっと洒落た地中海料理という感じだろうか。まずはマルタ名産のワイン、ハーフサイズで唯一あった「Delicata(デリカータ)」のシャルドネを。お値段は7ユーロ。日本でハーフ1000円程度のワインなど、居酒屋でも有り得ない値段だが、これが美味いの何の。一緒に頼んだスパークリングウォーターも上質だった。これで一気に期待が高まる。
  次は、緑の野菜のポタージュ。メインメニューについてくるサービスらしく、この日はほうれん草と何かのハーブがピューレになり、上品なブイヨンで煮込まれていた。仕上げに、バターをトッピング。これは美味しい。東京レベル。こんな地方の観光地で、精一杯シェフが勉強して頑張っているのがわかる。どうやら初日から、良い店に当たったようだ。旅の疲れもどこへやら、がぜん食欲がわいてきた。そこへ、マルタ名物「マルタパン」が登場。
 大きさはおにぎりくらいの丸パンで、外側がパリッとして内側がふんわりしている。マルタではこのパンが街のあちこちの屋台で売られていて、家で温めなおして食べると聞いた。

 運ばれてきたパンを手に取ると、熱々。割ったら中から湯気が出てきて、スープとワインと共に食べると、とても優しい味わいだ。しかし、これでお腹がいっぱいになってはメインが入らないので、少しずつ暮れゆく夕陽を見ながら楽しむことにした。

 メインの前に、サラダ。これはメニューになかったけれど、わがままを言ってプレーンなグリーンサラダを作ってもらった。そしたら本当にプレーン(ドレッシングなし)のサラダが来た。

 ウェイターさんが「胡椒をかけますか」と聞くので、挽きたてをたっぷりかけてもらい、塩でいただく。これは結果的に大正解。野菜が非常に美味しいのだ。取り合わせもルッコラやシャキシャキのアスパラ、きゅうりの細切り、ねぎなど絶妙で、野菜のほろ苦さや甘さや、香りを堪能しつつ、ワインを美味しく頂戴した。


 いよいよ次はメイン。マルタではパスタ類はStarter(前菜)サイズでオーダーできる場合が多いけれど、メインコースはそれがない。日本人には量が多いかと心配していたけど、比較的少な目の量で出てきて、一安心。

 選んだのは「海老と蟹のラビオリ、少しカレー風味のソース、ほうれん草添え」みたいなもの。大きさは日本で食べる水餃子より、少し大きめで弾力のある皮の中に、すり身の海老と蟹のフィリングがみっちりと詰まっている。
 ソースは薄味で、ほんのりカレーが香る。さっぱりと上品なヌーベルフレンチ仕立てのイタリアンだ。何より感心したのは、中央のほうれん草の火の通し具合。さっくりと甘味を残して加熱してある。しかもバターとワインが使われているのに、少しも水っぽくない。さすが、賞を取るだけのことはある味だった。きっと、この店では何を食べても美味しいのだろうと思う。

 お勘定は、サラダとメイン(パンとスープ付)、ワインハーフボトルとスパークリングウォーターで、計27ユーロ。チップを含めて30ユーロを置いてきたが、非常に満足なディナーだった。

 帰り道はもう、とっぷりと日が暮れて、街灯に照らされた遊歩道が、昼間とはまた違った表情を見せていた。写真の建物は、スリーマのランドマーク的なイタリアンレストラン「Il folizza」。ホテルからほど近い海側にある素敵な建物だが、表に観光客向けの呼び込み看板が出まくっていて、ちょっと入る気分にならなかった(笑)

 明日は名所をめぐるバスを予約したので、それに乗って遺跡や海を見に行こうと思う。朝早いので、早く寝なくては。

一日目 到着~ホテルへ



>> Flights to Malta

 マルタまでは、エミレーツ航空ドバイ経由で到着。途中、キプロス島のラルナカ空港で乗り継ぎがあり、マルタまで行く乗客は機内で乗客の入れ替えを待つ。キプロスを発った後は3時間くらいだろうか。眠ったり起きたりしていた私の眼下に、独特の色合いを持つマルタの島々が見えてきた。

 国際線の飛行機では、通路側のほうが食事や移動の際に便利だけれど、離着陸のときの景色だけは窓際の圧勝だ。寝ぼけまなこに多分ゴゾ島であろう、この海岸線が見えたとたんに、無意識でカメラを取り出し、撮影体勢に入った。

 上空から見るマルタは、全体がカフェオレのような色をしていて、森林に覆われた日本とは全く違う表情だ。乾いた石灰岩の大地に成り立つ国家というのが、よくわかる。
 さらに海岸線の特徴として、このように切り立った崖も多く、出発前「マルタはビーチが殆どない。荒波に削られた岩の海岸ばかりだ」と、記事で読んだのをなるほどと思い出した。
 そうしているうちに、飛行機は降下を続け、やがて「ルア空港」へランディングとなった。


 空港に降り立ち、まずは燦々と降り注ぐ陽気な太陽と、カラッと乾いた風が「ああ地中海地方へ来た」、という先制パンチ。次に、タラップを降りてバス移動というワンステップが「田舎ですよ、ここは」という、バカンス気分を盛り上げてくれる。乗客もほぼヨーロピアンで、同じリゾートでもハワイとは「外国度」が違う(笑)さすが何度も乗り継ぎした甲斐があったというものだ。

 この後、空港建物内で入国カードを書いて、ネット予約した「Malta transfer」(往復14ユーロでタクシーの1/3)を探すも、カード持って立ってるオッサンの中には見当たらず。途方に暮れていると、親切なおじいちゃんが「彼らは出口の外にいる」と連れて行ってくれた。
 取りあえずドライバーにバウチャーを見せて乗車できたが、マルタ式というか、空港に到着した人間の数が集まった時点で、バンに混載でホテルに輸送するシステムらしい。そのため出発まで30分ほど待たされた。確かに安いが、時間を気にする人には不向きなサービスだろう。


>> Hotel Park at Sliema

 空港から、ジローラモ似のドライバーがビュンビュン飛ばすメルセデスのバンに乗り、初めて見るライムストーンの街並みに「おぉ~」と感動しているうち、ホテルに到着。「Park Hotel」という一応4つ星のホテルで、首都Valletta(ヴァレッタ)から湾を挟んで対岸に位置するSliema(スリーマ)という街にある。
 ここで「一応4つ星」と書いたのは、マルタは観光局のホテル星付が非常にアバウトで、他のEU諸国レベルより星1~2個くらい落として考えた方がいいからだ。

 果たしてこの「Park Hotel」も、インターネットで紹介されていた豪華な写真とはうらはらに、日本の安いビジネスホテルから愛想を差っぴいた程度のものだった。(わかっちゃいるが、毎回騙される)

 しかし、地味な外装とボロっちい廊下にしょげていた私の気分は、部屋に入った途端に↑↑↑にシフトした!


 古臭いガチャ鍵で開く、重いドアの向こうには、何やらダダ広い空間。うむ、部屋が複数あるようだけれど…確か頼んだのは予約サイトで一番安い(なんと一泊45ユーロ)、ダブルのシングルユースだったはず。
 でもフロントはちゃんとバウチャー見たし、私の名前入りのウェルカムカードも置いてあるし、どうやらここで良いらしい。うわー、ちょっとラッキー。ドイツのホテルなんて値段は倍で、身動き取れんほど狭かったのに。田舎、ばんざい(笑)

 そうとわかれば、お子ちゃまだもの(笑)荷解きの前に撮影大会しなくちゃね。

まずは入り口から入った所。本物の石貼りの床が一面に続き、一番奥がリビングルーム。日本で言うと1LDKだけど、ヨーロッパの建物はとにかく天井が高いので、同じ面積でも広く感じる。でもって、ちょっと気になる左手側の扉。昔のマハラジャのVIPルームみたいなのを、レッツオープン。


 あらまあ!あらあらあら。ベッドルームが鏡張りのドアの中から登場。値段が値段なもので、軍の病院みたいなベッドを想像していたけど、こりゃーゆっくり休めそうだ。スプリングもフカフカで(ちょっと日本人には柔らかすぎるかもだけど)、ダブルというよりクイーンサイズ。ちなみにスライドドアの鏡は、内側が普通で表が模様入り。広さは8畳くらいかな。



 こっちは奥に進んだリビング。10畳くらいのスペースに、3人がけのソファが二つ。あと二人、余裕で泊まれるじゃないか、などと貧乏な頭で考えてしまう。さらに、この手前に4人用テーブルセットと書き物机、テレビボード。
  そこから入り口側に振り向くと、大きなクローゼットがあって、アイロン台とかリネンウォーターとか、ヨーロピアンなハウスキーピング用品が入ってる。

 靴箱も、この中に。金庫もドロワーもあって、リゾート地に長期滞在する地域のホテルって感じがする。家族で泊まっても、たっぷり収納できるし、サーフボードやカヌーなんかも持ち込んで収納できるそうだ。後で見取り図を確認したけど、この部屋はホテルで2番目に広く、単身者向けストゥーディオの2倍くらいの面積があった。


 さらに、小さいながらもベランダがついているのも評価したいところだが、いかんせん眺めがこれでは(苦笑)

 Sliemaのホテルは、その多くが美しい海岸線に沿ったタワー通りと呼ばれる遊歩道に面しているが、ここ「Park Hotel」は残念ながら一本裏通りに当たる。つまり、このベランダから見える建物が、海側の表通りに面しているわけだ。まあ、道一本だけなのでメインストリートへのアクセスは全く申し分ない。かえって騒がしい酔っ払いの声が聞こえない分、ゆっくり過ごせるメリットがある。

 さて、この他の設備は追々紹介するとして、日暮れまでにはまだ時間があるので、近所をぶらっと散歩しながら、美味しいディナーにでもありつこう。




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